企業や個人事業主にとって強い味方となる助成金、その中でも「雇用調整助成金」について説明します。
1.助成金とは?
まずは助成金について、説明します。
助成金とは、厚生労働省が管轄するもので、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などを目的として、一定の要件も満たした企業や個人事業主に支給されるお金のことです。
以下のような特徴があります。
①返済不要
助成金は、融資と違い返済不要です。これは事業主にとって大きなメリットとなります。
②原則いつでも申請可能
助成金と似たようなものとして補助金がありますが、補助金は公募期間が短いのに対して、多くの助成金は通年募集しています。ただし、人気の助成金に関しては、募集期間が短縮されることもあるので注意が必要です。
③支給のハードルが低い
助成金は補助金と違い、要件を満たしていれば、原則支給されます。補助金の場合と違って、申請に手間がかかったのに支給されなかったということが起きにくいので安心です。
2.雇用調整助成金とは?
それでは、今回のテーマである「雇用調整助成金」について説明します。
雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
コロナ禍の状況下で、多くの企業が休業を余儀なくされている今、この制度の重要度が増してきています。現在、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例として、令和2年4月1日から12月31日までの緊急対応期間における特例措置がとられていますので、今回はその雇用調整助成金の特例について説明します。
①支給対象となる事業主
新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置では、以下の条件を満たす全ての業種の事業主を対象としています。
・新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
・最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している(※)
※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があります。
・労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
②助成対象となる労働者
事業主に雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当などが、「雇用調整助成金」の助成対象です。学生アルバイトなど、雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当は、「緊急雇用安定助成金」の助成対象となります。(雇用調整助成金と同様に申請できます)
③助成額と助成率、支給限度日数
(平均賃金額(※) × 休業手当等の支払率)× 下表の助成率
(1人1日あたり15,000円が上限)
※平均賃金額の算定について、小規模の事業所(概ね20人以下)は簡略化する特例措置を実施しています。
区 分 | 大企業 | 中小企業 ※1 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主 | 2/3 | 4/5 |
解雇をしていないなどの上乗せの要件を満たす事業主 | 3/4 | 10/10 |
※1 中小企業とは、以下の要件に該当する企業をいいます。
・小売業(飲食店を含む): 資本金5,000 万円以下 または従業員 50 人以下
・サービス業: 資本金5,000 万円以下 または従業員 100 人以下
・卸売業: 資本金1億円以下 または従業員 100 人以下
・その他の業種: 資本金3億円以下 または従業員 300 人以下
助成金の支給限度日数は原則として1年間で100日分、3年で150日分ですが、緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和2年12月31日)に実施した休業などは、この支給限度日数とは別に支給を受けることができます
3.雇用調整助成金の会計処理
①勘定科目
支給される雇用調整助成金は、雑収入として計上します。
②計上時期
雇用調整助成金は、支給の対象となった休業手当を支払った年度の収益となります。
もし決算までに支給されていない場合は、未収計上しなければなりません。
その際に、すでに支給決定通知書が届いていれば、そこに記載されている金額を計上すればいいですが、届いていない場合は申請額を計上するようにしましょう。
4.まとめ
今回は雇用調整助成金について説明しました。助成金は返済の必要がなく、要件を満たせばほぼ確実に支給を受けることができるものです。コロナ禍の厳しい状況下で必ず資金繰りの手助けとなりますので、すでに雇用調整助成金の支給を受けている方も多いと思いますが、まだという方がいましたら、助成額も助成率も上がっていますので是非申請しましょう。